人間慣れれば、色々な事がなんてことはなくなる

ちょっと髪が伸びてきたので、先日切った単店系サロンに再び出向く。
週末だったこともあり少し混んでいるが「15分で大丈夫」と店主に言われる。
「前のお兄ちゃんに、あ、あの人に切ってほしいんだけど?」
「大丈夫、わかった!15分後だ!」と店主。
インドで15分と言われたら『15分以上は少なくともかかるよ、正確にはわからないよ』という意味だが、まぁ、店内でのんびり待つことにする。
目の前で富裕層の子供が髪をカットしてもらっている。
サイドを刈り上げ、そりこみまで入れて、まだ5,6歳ながらなかなかのイケメンだ。
自分でもよくわかっているらしく、なかなかのドヤ顔で髪を切られている間、ずっと鏡を見つめている。
こんな小さいころからドヤ顔してるんだね、インド人は。
子供のころ恥ずかしかったけどね、床屋で切られている時。
などど思っていたら、自分の番が。
待つこと20分なのでかなり順調なケースだ。
しかし、指名したお兄ちゃん以外のお兄ちゃんが「さて、どうする?」と聞いてくる。
「指名したお兄ちゃんがいいよ、あのお兄ちゃんは?」
「まだかかるよ、俺が切るよ」
「いや、前と同じがいいから、前と同じ兄ちゃんがいいよ」
「そっか、まぁでも、同じように俺が切るよ、どんな感じ?」
「うーん、やっぱり、同じ人がいいんだ、あのお兄ちゃんで頼むよ」
「あいつはまだ手が空かないから俺が切るよ」
…なんというか、不毛と言うか、とにかく疲れるやり取りが続く。
人を変えてそいつが納得いくように切ってくれるかわからないし、こちらとしては人を変える気はないので粘る。
「とにかく、待つからあの兄ちゃんで頼むよ」
「OK、わかった、時間はかかるけど、待っててよ」
最初からこちらは指名して、向こうは了解しているのに、なんでこんなに疲れる会話を延々とせにゃならんのだ。
で、待つことわずか3分、そのお兄ちゃんはやってきた。
なんなんだ、すぐ手が空くんじゃないか、本当に適当なやつらだ…と思いつつ、「前と同じで」と前と同じ写真も見せつつ、オーダーする。
「(俺の腕が気に入ったか、そうかそうか、ふふん)OK!覚えてるよ!Same!」とかなりの、かんなりの、ドヤ顔でお兄ちゃんはハサミを手にする。
するとこの兄ちゃん、前回しなかったような切り方をはじめた。
「おいおい、ほんとにわかってんのか、前と同じになるのか?」と不安になる。
髪をねじって、カミソリでそいでいくやり方でグイグイ頭をやられながら、とにかく切られる。
なんなんだろう、最近覚えたカット方なのか?なぜ、前と同じ、といってるのに切り方を変える?と疑問が沸くが、この兄ちゃんは英語がダメなので見守る。
ほどなく完成したカットは前回と似てはいるが、ちょっと違う仕上がりになり、しかも長さも変えられている。
そして最後に兄ちゃん、「Perfect?More better!」とドヤ顔で言い放つ。
いやさ、『前と同じで、とオーダーしてんのに変えんじゃねぇぇぇぇえええ!!!』と内心思うが、もう色々と疲れているし、再注文するほどではない。
「(色々と言いたいことはあるけど)Very nice...」と体よく濁す。
お会計はなんと前回160ルピーだったのに、今回は150ルピー。
なぜか安くなる。

もう意味が分からない。

しかし、これがインドだ。
こんな類の事がインドでは日常茶飯事だ。
わざわざ書き起こしてはいるが、こんな事はしょっちゅう起こるし、人間不思議と慣れてくるもので。
もはや言うほどストレスを感じていない自分がいる。


インドを経験できて、本当に良かった。